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聴覚障害とは?難聴の等級やコミュニケーションの工夫・仕事で使えるサポートを解説

「聴覚障害」と聞くと、「音が全く聞こえない状態」や「補聴器を使っている人」など、様々なイメージがあるかもしれません。しかし、聴覚障害のある方の聞こえの状態やコミュニケーション方法は一人ひとり大きく異なり、その多様性はあまり知られていません。

聴覚障害は外見から分かりにくいため、「見えない障害」とも呼ばれます。そのために職場や日常生活で誤解されたり、必要なサポートを受けられなかったりするケースも少なくありません。しかし、周囲が少しの工夫と正しい知識を持つことで、コミュニケーションの壁は乗り越えられます。

この記事では、聴覚障害の基本的な知識から、多様な聞こえ方の状態、身体障害者手帳の等級と申請プロセス、具体的なコミュニケーションの工夫、そして仕事で活用できる公的なサポート制度まで、網羅的に解説します。この記事を通して聴覚障害への理解を深め、ご自身や周りの方がより安心して社会生活を送るための一助となれば幸いです。

聴覚障害とは?

音が聞こえにくい、または全く聞こえない状態

聴覚障害とは、音を認識する聴覚の仕組みのいずれかに障害があり、音が聞こえにくい、あるいは全く聞こえない状態を指します。その程度は、小さな声が聞き取りにくい「軽度難聴」の方から、音が全く聞こえない方まで様々です。完全に音が聞こえない状態だけでなく、聞こえにくい「難聴」も聴覚障害に含まれます。聴覚障害は外見から分かりにくいため、本人がコミュニケーションに困っていても周囲に気づかれにくいという側面があります。また、生まれつきの障害だけでなく、病気や事故、加齢など、人生の途中で聴覚に障害を持つ「中途失聴・難聴者」も多くいます。

「難聴」「中途失聴」 聞こえ方の多様性

聴覚障害は、一括りにはできません。「いつから」聞こえにくくなったか、また「どのように」聞こえるかによって、その方の言語やアイデンティティ、コミュニケーション方法が大きく異なるためです。

難聴(者)
聞こえにくい状態全般を指しますが、特に音声言語を習得した後に聞こえにくくなった人や、補聴器などを使ってある程度音を聞き取れる人を指すことが多いです。コミュニケーションは口話や筆談、補聴器の活用など多岐にわたります。

 

中途失聴者
音声言語を習得した後に、病気や事故などで聴力を失った人を指します。元々話すことができたため、発音は明瞭なことが多いですが、自分の声も聞こえないため声量の調整が難しい場合があります。コミュニケーションは筆談や口話が中心となります。

 

また、「感音難聴」の場合、単に音が小さく聞こえるだけでなく、「音は聞こえるが、言葉として聞き分けられない」「特定の周波数の音が極端に聞こえにくい」「音が割れたり響いたりする」といった複雑な聞こえ方をしている場合も多く、その困難さは周囲から理解されにくいのが現状です。

難聴の種類と聞こえの仕組み

音が「聞こえる」とは、耳から入った音の振動が脳に信号として伝わる一連のプロセスを指します。この音の伝わる経路のどこに障害があるかによって、難聴は主に3つの種類に分類されます。

音の伝わる仕組み

外耳・中耳(音を伝える部分)
耳介で音を集め、鼓膜と耳小骨で音の振動を増幅して内耳へ伝えます。

 

内耳(音を感じる部分)
蝸牛(かぎゅう)で音の振動を電気信号に変換します。

 

聴神経・脳(音を認識する部分)
電気信号が聴神経を通り、脳に伝わることで「音」として認識されます。

 

難聴の主な種類

この仕組みに基づき、難聴の種類と特徴を見ていきましょう。

難聴の種類 障害のある部位 主な特徴
伝音難聴 外耳、中耳 ・音が内耳までうまく伝わらない状態。
・原因は中耳炎や鼓膜の損傷など。
・音は小さくこもって聞こえるが、言葉の聞き分けは比較的良好。
・補聴器で音を大きくすれば、聞こえが改善しやすい。
・治療による聴力回復の可能性がある。
感音難聴 内耳、聴神経、脳 ・音を電気信号に変える部分や、脳へ伝える神経の障害。
・原因は加齢、騒音、突発性難聴など。
・音が歪んだり、響いたりして聞こえる。
・特に高音域が聞こえにくく、言葉の聞き間違いが多い。
・補聴器を使っても、聞こえの改善には限界がある場合がある。
混合性難聴 伝音難聴と感音難聴の両方 ・伝音難聴と感音難聴の両方の原因を併せ持つ状態。
・例:加齢による感音難聴の方が、中耳炎を併発した場合など。

聴覚障害の程度と身体障害者手帳

難聴の程度(レベル)と等級

聴力のレベルは「デシベル(dB HL)」という単位で表され、数値が大きいほど聞こえにくいことを意味します。この聴力レベルや言葉の聞き取り能力(語音明瞭度)によって、身体障害者手帳の等級(主に2級、3級、4級、6級)が判定されます。

等級 主な基準
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの(全く聞こえない)
3級 両耳の聴力レベルが90dB以上のもの
4級 1. 両耳の聴力レベルが80dB以上のもの
2. 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの
6級 1. 両耳の聴力レベルが70dB以上のもの
2. 一側耳の聴力レベルが90dB以上、他側耳の聴力レベルが50dB以上のもの

手帳を取得すると、補聴器購入費の助成や税金の控除、障害者雇用枠での就労など、様々な福祉サービスや支援制度を利用できます。

身体障害者手帳の申請プロセス

手帳の申請は、一般的に以下の流れで進みます。

    1. 市区町村の窓口で相談・申請書類の入手:まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口へ行き、申請の意思を伝えて「身体障害者手帳交付申請書」や「診断書・意見書」の様式を受け取ります。

 

    1. 指定医の受診と診断書の作成依頼:身体障害者福祉法第15条の規定に基づき都道府県が定めた「指定医」を受診し、聴力検査など必要な検査を受けた上で、「診断書・意見書」の作成を依頼します。

 

    1. 申請書類の提出:記入した申請書、指定医が作成した診断書・意見書、本人の写真などを揃えて、再度市区町村の窓口に提出します。

 

    1. 審査・交付:提出された書類をもとに審査が行われ、認定されると自宅に手帳が郵送されるか、窓口で交付されます。

 

申請を検討している方は、まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。

聴覚障害のある方とのコミュニケーションの工夫

コミュニケーション方法の種類と配慮

聴覚障害のある方は、手話、指文字、筆談、口話、補聴器・人工内耳の活用など、複数の方法を組み合わせてコミュニケーションをとっています。周囲の人が少し意識するだけで、意思疎通は格段にしやすくなります。視界に入ってから話しかける、口元を見せてゆっくり・はっきり話す、視覚情報を活用する、短い文章で伝える、伝わったか確認するといった配慮が有効です。

便利なコミュニケーションツールとオンラインでの配慮

近年、コミュニケーションを助ける便利なツールが増えています。また、オンラインでのやり取りが増える中、新たな配慮も求められます。

音声認識アプリ
「UDトーク」などのアプリを使えば、話した言葉をリアルタイムで文字に変換してくれます。会議や研修の場で非常に有効で、スマートフォンやタブレットに表示して情報保障が可能です。

 

筆談ツール
紙とペンだけでなく、電子メモパッド(筆談器)はボタン一つで書いた内容を消去でき、手軽で便利です。また、スマートフォンのメモアプリやチャットツールも、素早く筆談できる有効な手段です。

 

オンラインでの配慮

映像
必ずカメラをオンにし、顔(特に口元)が明るくはっきり映るようにしましょう。背景はシンプルなものを選ぶと、表情や口形が読み取りやすくなります。

 

音声
発言者以外はマイクをミュートにし、雑音を減らしましょう。発言する際は、一人ずつ順番に、少しゆっくり話すことを心がけます。

 

テキストの併用
会議システムのチャット機能を積極的に活用し、要点や固有名詞、質問などを文字で補足すると、理解の助けになります。

 

仕事で活用できるサポートや支援機関

職場で求められる合理的配慮

障害者雇用促進法では、事業主に対し、障害のある人が働く上での障壁を取り除くための「合理的配慮」の提供を義務付けています。これは、本人の申し出に基づき、過重な負担にならない範囲で個別の調整を行うものです。

困りごとの場面 対処法・合理的配慮の例
電話応対 ・電話応対の免除
・メールやチャットでの連絡を基本とする
・電話リレーサービス(通訳オペレーターを介して電話できる公的サービス)の利用
会議・研修 ・手話通訳者や要約筆記者の配置
・発言者の近くへの座席配慮、事前の資料共有
・音声認識アプリや字幕付き動画教材の活用
業務上の指示 ・指示は口頭だけでなく、メモやチャットなど文字で伝達
・指示内容の復唱による確認
緊急時の連絡 ・光や振動で知らせる警報装置(パトランプなど)の設置
・緊急時の連絡担当者を決め、個別に知らせる体制づくり

頼りになる公的な相談・支援機関

聴覚障害のある方の就労を支援する専門機関があります。一人で悩まず、積極的に活用しましょう。

聴覚障害者情報提供施設
各都道府県に設置され、コミュニケーション支援(手話通訳者等の派遣)や相談支援、情報提供などを行う、地域支援の中核的な施設です。

 

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
就職から職場定着まで、仕事と生活の両面から一体的な支援を提供する身近な相談機関です。

 

ハローワーク(専門援助部門)
障害に関する専門知識を持つ職員が、職業相談や求人紹介を行います。

 

地域障害者職業センター
職業評価やリワーク支援のほか、専門のジョブコーチを職場に派遣し、本人と企業の双方に具体的な支援を行う「ジョブコーチ支援」などを実施しています。

 

就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、職業訓練や求職活動支援、就職後の定着支援などを原則2年間提供する福祉サービスです。 就職後も最長3年半、職場に定着できるようサポートを受けられるのが大きな特徴です。

 

聴覚障害の悩みを相談しながら働ける就労継続支援B型事業所オリーブ

「すぐに一般企業で働くのは不安」「コミュニケーションに配慮のある環境で、自分のペースで働きたい」

そうお考えの場合、「就労継続支援B型事業所」という選択肢があります。私たち就労継続支援B型事業所オリーブは、障害や心身の不調により、現時点で雇用契約を結んで働くことが難しい方が、軽作業などを通じて生産活動に参加できる福祉サービス事業所です。

オリーブでは、聴覚障害のある方も安心して活動できるよう、一人ひとりの特性に合わせた環境を整えています。

視覚的な指示
作業の指示は、口頭だけでなく、見本や手順書を用いて分かりやすく伝えます。

 

筆談でのコミュニケーション
支援員との日々のやり取りは、筆談を基本とし、丁寧な意思疎通を心がけています。

 

集中できる作業環境
周りを気にせず集中したい方のために、パーテーションで区切られた個別スペースも用意しています。

 

体調に合わせた利用
週1日、1日1時間といった短時間からのスタートも可能で、ご自身のペースで無理なく通えます。

 

経験豊富な支援員が、仕事の悩みはもちろん、日常生活での不安についても親身に相談に応じます。 まずは見学や体験利用から、オリーブの雰囲気を感じてみませんか。あなたからのご連絡を心よりお待ちしております。

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