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慢性疲労症候群とは?症状・診断基準・何科を受診すべきかを解説

  • 「いくら寝ても、まったく疲れがとれない」
  • 「少し動いただけなのに、翌日は鉛のように体が重くて起き上がれない」
  • 「頭に霧がかかったように、ぼーっとして考えがまとまらない」

もしあなたが、このような原因不明の極度の疲労感に半年以上悩まされているなら、それは単なる「疲れ」や「気力不足」ではないかもしれません。その症状は、「慢性疲労症候群(CFS)」、国際的には「筋痛性脳脊髄炎(ME)」と呼ばれる、れっきとした病気の可能性があります。

この記事では、いまだ社会的な認知度が低く、誤解されやすい慢性疲労症候群(ME/CFS)について、その具体的な症状から診断基準、原因、治療法までを網羅的に、そして分かりやすく解説します。

また、「このつらい症状、一体何科に行けばいいの?」という切実な疑問にお答えするとともに、診断後に利用できる公的な支援制度についても詳しくご紹介します。この記事が、長引く不調の原因が分からず苦しんでいるあなたにとって、正しい知識を得て、適切な医療や支援につながるための一助となることを願っています。

慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)とは?

日常生活を破壊する深刻な身体疾患

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome: CFS)は、これまで健康に生活していた人が、ある日突然、原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降、強度の疲労感と、それに伴う様々な症状が長期間(通常6ヶ月以上)にわたって続く病気です。

国際的には、神経や免疫、内分泌系の異常が関わる複雑な身体疾患であるとの認識から「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: ME/CFS)」という名称で呼ばれることが一般的です。

この病気の最大の特徴は、以下の2点です。

  • 休息しても全く回復しない、説明不能なほどの強い疲労感。
  • 身体的、精神的な活動の後に、症状が極端に悪化し、それが長時間続くこと(労作後症状増悪:PEM)。

単なる疲労とは質的に異なり、これまで普通にできていた仕事や家事、学業などができなくなり、重症の場合には寝たきりの生活を余儀なくされることもあります。しかし、外見からは病気のつらさが分かりにくいため、周囲から「怠けている」「気のせいだ」と誤解され、二重の苦しみを抱える患者さんが少なくありません。

慢性疲労症候群の主な症状

ME/CFSの症状は非常に多彩で、全身に及びます。その現れ方や重症度には個人差がありますが、中心となるのは「労作後症状増悪(PEM)」です。

最重要症状:労作後症状増悪(PEM)

労作後症状増悪(Post-Exertional Malaise: PEM)は、ME/CFSを最も特徴づける中核的な症状です。身体的、精神的、あるいは感情的な負荷、つまり患者さんにとっての「頑張り」の後に、症状が急激に悪化することを指します。

この症状悪化は、活動の直後ではなく、24時間~72時間後に現れることが多く、一度悪化すると回復に数日、数週間、あるいはそれ以上かかることもあります。患者さんたちはこの状態を「クラッシュ」と表現します。例えば、シャワーを浴びただけ、集中して会話をしただけで、翌日から数日間寝込んでしまう、といったことが起こります。このPEMがあるために、患者さんは自分の活動量を厳しく管理(ペーシング)しなければならず、社会生活を送ることが極めて困難になります。

その他の主な症状

PEMに加えて、以下のような様々な症状が見られます。

症状のカテゴリー 具体的な症状の例
回復しない疲労と睡眠障害 ・寝ても寝ても疲れがとれない、かえって疲労感が増す(非回復性睡眠)。
・寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、日中の過度な眠気。
認知機能障害(ブレインフォグ) ・頭に霧がかかったようにぼーっとする。
・集中力や思考力の低下。
・新しいことが覚えられない(記憶障害)。
・言葉がすぐに出てこない、文章の理解が難しい。
痛み ・筋肉痛(特に原因なく、全身の筋肉が痛む)。
・関節痛(腫れや赤みはないのに、複数の関節が移動性に痛む)。
・頭痛(これまで経験したことのないような種類の頭痛)。
自律神経・神経内分泌系の症状 ・立ちくらみ、めまい、動悸(起立不耐性)。
・体温調節がうまくできない(微熱が続く、異常な寒気やほてり)。
・吐き気、腹痛、下痢や便秘などの過敏性腸症状。
免疫・感覚系の症状 ・風邪をひきやすく、治りにくい。
・リンパ節の腫れや痛み(特に首や脇の下)。
・光や音、匂い、特定の化学物質などに対する過敏症。

慢性疲労症候群の診断基準

ME/CFSの診断は、患者さんの訴えを丁寧に聞き取ることが基本となりますが、客観的な指標となる特異的な検査法がまだ確立されていないため、診断は非常に難しいのが現状です。診断は、甲状腺機能障害や膠原病、多発性硬化症、悪性腫瘍、重度のうつ病など、同様の症状を呈する他の病気の可能性を一つひとつ除外していく「除外診断」というプロセスを経て、慎重に行われます。

厚生労働省の診断基準(2016年)

日本では、厚生労働省の研究班が作成した診断基準が広く用いられています。

必須条件(すべてを満たす必要あり)

    • 6ヶ月以上持続・再発を繰り返す、原因不明の強い疲労感
    • 労作後症状増悪(PEM)
    • 睡眠障害(特に非回復性睡眠)

 

付随する症状の条件(どちらか一方を満たす必要あり)

  • 認知機能障害(ブレインフォグ)
  • 起立不耐性(立ちくらみなど)

 

慢性疲労症候群の原因

ME/CFSの明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、世界中の研究によって、この病気が単なる精神的な問題ではなく、感染症などをきっかけとした免疫系、神経系、内分泌系の機能障害であることが明らかになってきています。近年では、新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)とME/CFSの症状や病態の類似性も注目され、研究が加速しています。

慢性疲労症候群の治療方法

現時点ではME/CFSを根本的に治癒させる特効薬はないため、治療は個々の症状を緩和し、生活の質(QOL)を維持・向上させる「対症療法」が中心となります。

ペーシング(活動量のペース配分)

最も重要な治療法は、PEMを誘発しないよう、自身のエネルギーの限界内で活動を管理する「ペーシング」です。活動記録をつけたり、心拍数をモニターしたりしながら、無理のない範囲で活動と休息のバランスを取るセルフマネジメントが求められます。

薬物療法とその他の治療法

痛み、睡眠障害、抑うつ状態など、個々の症状に対して補助的に薬物療法が行われます。また、認知行動療法(CBT)は、病気を正しく理解し、ペーシングを学ぶための学習療法として行われる場合があります。

注意点:かつて推奨されていた段階的運動療法(GET)は、PEMを悪化させる危険性が高いため、現在では多くの国の診療ガイドラインで推奨されていません。安易な運動は禁物です。

診断・治療と利用できる公的支援

慢性疲労症候群は何科を受診すべきか

ME/CFSの診断・治療で患者さんが最初に直面する壁が「どの診療科を受診すればよいか」という問題です。

第一歩は内科・総合診療科
まずは、他の身体疾患を除外するために、かかりつけの内科や総合診療科を受診するのが一般的です。
専門医を探すことが最重要
最終的には、この病気の診療経験が豊富な医師や、専門外来を設置している医療機関を探し当てることが最も重要です。数は非常に少ないですが、大学病院や一部のクリニックには専門外来が存在します。日本医療研究開発機構(AMED)の研究班のウェブサイトや、患者会(NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会など)が公開している医療機関リストを参考に、根気強く情報を探すことが求められます。

 

診断されたら利用できる社会的支援

ME/CFSと診断された場合、その症状や障害の程度に応じて、様々な公的支援制度を利用できる可能性があります。これらの制度は、療養生活を経済的・社会的に支える上で非常に重要です。

障害者手帳

ME/CFSは、それ自体が障害者手帳の対象疾患とはなっていませんが、症状によって手帳を取得できる場合があります。

身体障害者手帳
重度の疲労倦怠により、日常生活が著しく制限される状態が続くと、「心臓機能障害」や「肢体不自由」などに準ずるとして、手帳が交付されるケースがあります。

 

精神障害者保健福祉手帳
うつ病などの精神疾患を併発している場合や、認知機能障害(ブレインフォグ)が顕著な場合に、交付の対象となることがあります。

 

障害年金

病気によって仕事や日常生活に大きな支障が出ている場合、生活を支えるための公的年金である「障害年金」を受給できる可能性があります。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、初診日に加入していた年金制度によって種類が決まります。申請には、初診日の証明や、日常生活能力の程度を記述した診断書など、専門的な書類が必要となるため、社会保険労務士や患者会に相談することも有効です。

その他の支援制度

 

傷病手当金
会社員などで健康保険に加入している方が、病気で働けなくなった場合に、給与の一部が最長1年6ヶ月間支給される制度です。

 

難病医療費助成制度
現時点(2025年7月)でME/CFSは指定難病ではありませんが、将来的に対象となる可能性があります。最新の情報は、難病情報センターなどで確認することが重要です。

 

ヘルプマーク
外見からは分かりにくい困難を抱えていることを、周囲に知らせるためのマークです。自治体の窓口などで配布されています。

 

一人で抱え込まず相談を

長引く原因不明の不調は、社会からの孤立感を生みます。しかし、あなたは一人ではありません。お住まいの地域の保健所や、難病相談支援センターなども、情報提供や療養上の相談に乗ってくれる心強い味方です。患者会に参加し、同じ病気を抱える仲間と情報を交換することも、大きな支えとなるでしょう。

慢性疲労症候群と診断されたら就労継続支援B型事業所オリーブへ

ME/CFSと診断された方が仕事を続けることは、非常に困難を伴います。特に、労作後症状増悪(PEM)という特性は、決まった時間に通勤し、一日中働き続けるという一般的な就労スタイルとは相性が悪く、症状を悪化させて離職に至るケースが少なくありません。

  • 「社会との繋がりは保ちたいけれど、フルタイムで働くのは無理」
  • 「体調の波が激しくて、安定して出勤する自信がない」
  • 「少しでもいい。自分にできる範囲で何か役割を持ちたい」

もしあなたが、このような切実な思いを抱えているなら、就労継続支援B型事業所という働き方を検討してみませんか。

私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、関西(大阪、兵庫、京都、奈良)に拠点を置き、ME/CFSをはじめ、様々な障害や病気のある方が、ご自身の体調とペースを最優先にしながら働ける場所を提供しています。

オリーブでは、PEMのつらさを深く理解し、週1日、1日1時間といったごく短時間の利用から始めることが可能です。体調が優れない日には無理せず休むことができ、事業所内には横になって休憩できるスペースも確保しています。データ入力や軽作業など、心身への負荷が少ない作業を中心に、在宅での作業についてもご相談に応じています。

経験豊富な支援員が、あなたの体調の波に寄り添い、エネルギー管理(ペーシング)を一緒に考えながら、無理なく続けられる働き方を提案します。オリーブは、あなたが病気と付き合いながら、安心して社会参加できる「居場所」です。見学やご相談は随時受け付けております。あなたのペースで、次の一歩を踏み出すお手伝いをさせてください。まずはお気軽にお問い合わせください。

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