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難病のある方の仕事・求人探しのポイントは?利用できる支援機関も解説

難病と診断されても、仕事を諦める必要はありません。病状や体調と向き合いながら、自分に合ったペースで働き、社会とのつながりを持ち続けることは可能です。しかし、いざ仕事を探そうと思っても、「何から始めればいいのか」「どのような配慮を求められるのか」「誰に相談すればいいのか」といった不安や疑問が次々と浮かんでくるのではないでしょうか。

この記事では、まず「難病」の定義と利用できる制度の基本を解説し、その上で仕事探しを始める際の準備やポイント、頼りになる専門の支援機関や福祉サービスについて、網羅的に解説します。ご自身の病状や希望に合った働き方を見つけ、安心して新たな一歩を踏み出すためのヒントがきっと見つかるはずです。

はじめに:そもそも「難病」とは?

仕事探しの話に入る前に、まず「難病」が法律上どのように定義され、なぜ障害福祉サービスの対象となるのかを理解しておくことが重要です。

難病の定義と「指定難病」

「難病」という言葉は広く使われていますが、法律(難病の患者に対する医療等に関する法律、通称「難病法」)では、以下の4つの要件をすべて満たすものと定義されています 。

  • 発病の機構が明らかでない
  • 治療方法が確立していない
  • 希少な疾病である
  • 長期の療養を必要とすること

この定義に基づき、国が定める基準を満たした疾病が「指定難病」とされています。指定難病と診断された方は、医療費の助成制度(特定医療費助成制度)の対象となります 。

障害者総合支援法の対象となる難病

2015年より、障害者総合支援法の対象に、一部の難病(指定難病を含む360以上の疾病)が加わりました 。これにより、障害者手帳の有無にかかわらず、対象の難病があると診断された方は、必要性が認められれば、この記事で後述する「就労移行支援」や「就労継続支援」といった障害福祉サービスを利用できるようになりました。この法改正は、難病のある方の就労を支える大きな一歩となっています。

難病のある方の仕事探し・準備の進め方

安心して長く働き続けるためには、事前の準備が非常に重要です。ご自身の健康状態を正確に把握し、どのような働き方が可能かを具体的に検討することから始めましょう。

ステップ1:主治医と相談し、就労の可否と条件を確認する

仕事を探し始める前に、必ず主治医に相談し、就労が可能かどうか医学的な判断を仰ぎましょう。ご自身では「働ける」と感じていても、客観的に見て仕事が病状に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。

▼主治医との相談で確認すべきポイント

就労の可否
現在の病状で仕事を開始しても問題ないか 。

 

業務内容
どのような業務なら可能か(デスクワーク中心、軽作業など)。

 

勤務条件
望ましい勤務時間・日数(例:1日4時間、週3日)、休憩の頻度や取り方、通院のための休暇取得の必要性 。

 

必要な配慮
避けるべき作業(重量物の運搬、長時間の立ち仕事、寒暖差の激しい場所など)、体調急変時の対処法、服薬管理について 。

 

主治医の意見は、客観的な指針となるだけでなく、支援機関への相談や企業への応募時に提出する「意見書」の基礎となり、必要な配慮を具体的に伝えるための重要な資料となります。

ステップ2:オープン就労かクローズ就労かを検討する

ご自身の病気について応募先の企業に伝えるかどうかは、大きな決断です。これには「オープン就労」と「クローズ就労」という2つの働き方があり、それぞれに利点と欠点があります。

オープン就労
自身の障害や病気の情報を企業に開示した上で就職する方法。「障害者雇用枠」での応募がこれにあたります。
クローズ就労
障害や病気を企業に開示せず、一般の求人枠で就職する方法。

 

働き方 メリット デメリット
オープン就労 ・病状に応じた業務内容、勤務時間、通院への配慮(合理的配慮)を得やすい 。
・障害者雇用促進法に基づき、企業には配慮提供の義務があるため相談しやすい 。
・障害者専門の求人があるため選択肢が広がる 。
・一般雇用の求人と比較して、求人数や職種が限られる傾向がある 。
・給与水準が一般雇用より低くなる場合がある 。
クローズ就労 ・障害の有無にかかわらず、能力や経験で評価される 。
・職種や業種の選択肢が広く、キャリアアップの機会も多い 。
・給与水準が比較的高い傾向にある 。
・病気や通院に対する配慮を得ることが難しい 。
・体調不良を理由に休みを取りにくく、病状が悪化するリスクがある 。
・周囲に隠し続ける精神的な負担を感じることがある 。

安定して長く働くことを最優先に考えるなら、必要な配慮を受けやすい「オープン就労」が有力な選択肢です。なお、難病のある方は、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書などを提出することで障害者雇用枠に応募できる場合があります

オープン就労で求められる「合理的配慮」の具体例

オープン就労を選択した場合、企業に対して「合理的配慮」を求めることができます。これは、障害のある方が働く上での障壁を取り除くために、企業側が過重な負担にならない範囲で提供する配慮のことです。難病のある方の場合、以下のような配慮が考えられます。

出退勤に関する配慮
通勤ラッシュを避けるための時差出勤、体力消耗を抑えるための在宅勤務(テレワーク)や短時間勤務制度の利用。

 

業務に関する配慮
疲労を考慮した業務量の調整、重い物を持つ作業や長時間の立ち仕事の免除、休憩をこまめに取れるような柔軟な対応。

 

通院に関する配慮
定期的な通院のための休暇取得(半日単位や時間単位の年休など)への理解と協力。

 

職場環境に関する配慮
感染症予防のための座席位置の工夫や空気清浄機の設置、温度変化に敏感な方のための空調調整、体調不良時に休める休憩室の確保。

 

これらの配慮は、主治医の意見書などを基に、具体的に「何が困難で、どのような配慮があれば働けるのか」を伝えることが重要です。

ステップ3:希望する仕事に必要なスキルを身につける

希望する仕事に就くためには、企業が求めるスキルを身につけておくことが大切です。特に、体調への負担が少ない事務職を希望する場合には、基本的なPCスキルは強みになります。

▼事務職で求められる基本的なPCスキル

Word
ビジネス文書(報告書、送付状など)の作成、表や画像の挿入 。

 

Excel
データ入力、表計算、基本的な関数(SUM, AVERAGEなど)、グラフ作成 。

 

PowerPoint
プレゼンテーション資料の作成、図形やアニメーションの活用 。

 

これらのスキルは、職業訓練校や後述する就労移行支援事業所などで学ぶことができます。MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)などの資格を取得すると、客観的なスキルの証明となり、就職活動で有利に働くことがあります 。

ステップ4:面接の準備をする

書類選考を通過したら、次は面接です。特にオープン就労の場合は、病状や必要な配慮について、面接官に分かりやすく伝える準備が不可欠です。

▼面接でよく聞かれる質問と回答のポイント

「ご自身の病状について、差し支えない範囲で教えてください」
ポイント:病名を伝えるだけでなく、「どのような症状があり、業務にどう影響する可能性があるか」「普段は安定しているが、〇〇な状況では注意が必要」など、仕事に関係する範囲で具体的に説明します。自己管理できていることを伝え、不安を与えすぎない配慮も大切です。

 

「弊社で働く上で、どのような配慮が必要ですか?」
ポイント:ステップ1で確認した主治医の意見や、前述の「合理的配慮の具体例」を参考に、具体的に、かつ前向きに伝えます。「〇〇という配慮をいただければ、他の社員の方と同様に業務を遂行できます」といった形で、貢献意欲も示しましょう。

 

「体調が悪くなった時は、どのように対処しますか?」
ポイント:自分なりの対処法(服薬、短時間の休憩など)や、会社に定めてほしいルール(誰に報告するかなど)を具体的に説明し、自己管理能力と問題解決能力があることを示します。

 

事前にハローワークや支援機関の担当者と相談し、模擬面接を繰り返しておくことで、自信を持って本番に臨むことができます 。

難病のある方の仕事探しで利用できる支援機関

一人で仕事探しを進めるのは大きな負担です。専門的な知識を持つスタッフが無料で相談に応じてくれる公的な支援機関を積極的に活用しましょう。

ハローワーク(難病患者就職サポーター)

ハローワーク(公共職業安定所)には、障害のある方向けの専門窓口があります 。一部のハローワークには、難病のある方の就職を専門に支援する「難病患者就職サポーター」が配置されており、病状や治療と仕事の両立に関するより専門的な相談が可能です 。求人紹介から応募書類の添削、面接練習まで、就職活動全般をサポートしてくれます 。

難病相談支援センター

各都道府県・指定都市に設置され、難病のある方や家族の様々な相談に応じる拠点です 。保健師や社会福祉士などの専門職が、療養生活と仕事の両立に関する悩みを聞き、ハローワークなど適切な関係機関へ繋いでくれます 。

地域障害者職業センター

ハローワークと連携し、より専門的・個別的な職業リハビリテーションを提供します 。専門のカウンセラーが、作業評価を通じて適した職種や必要な配慮を整理したり(職業評価)、働く上で必要なスキルを学ぶ講座を提供したり(職業準備支援)します 。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

仕事(就業)と日常生活(生活)の両面から一体的なサポートを行う身近な相談窓口です 。「仕事はしたいけれど、金銭管理や体調管理にも不安がある」といった場合に、両方の側面から支援を受けられる心強い存在です 。

産業保健総合支援センター(さんぽセンター)

主に事業者向けの機関ですが、労働者本人も治療と仕事の両立に関する専門的な相談が可能です 。会社に在籍中に病気が見つかった場合や復職を考える際に、会社とどのように調整すればよいかといった具体的なアドバイスを受けられます 。

仕事と治療の両立を支える経済的支援制度

就労を考える上で、生活の経済的な基盤を整えることも重要です。難病のある方が利用できる代表的な制度を知っておきましょう。

 

特定医療費(指定難病)助成制度

指定難病にかかる医療費の一部を国と都道府県が助成する制度です。医療保険の自己負担分(通常3割)が2割に軽減され、さらに所得に応じて自己負担上限額が設定されます。申請は、お住まいの地域の保健所などで行います。

 

障害年金

病気やケガによって生活や仕事が制限される場合に受け取れる公的な年金です。障害の原因となった病気の初診日に加入していた年金制度によって「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。受給には、保険料の納付状況など一定の要件を満たす必要があります。手続きが複雑なため、年金事務所や社会福祉士、社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

就職準備から職場定着までを支える就労支援サービス

障害者総合支援法に基づき、より実践的なトレーニングや就労機会を提供する福祉サービスです。対象となる難病の方は、市区町村の障害福祉担当窓口に申請することで利用できます 。

就労移行支援

一般企業への就職を目指す方(原則65歳未満)が、職業訓練や求職活動支援、就職後の定着支援を受けられるサービスです 。PCスキルやビジネスマナーを学び、職場実習などを通じて、就職に必要な準備を体系的に行います 。利用期間は原則2年です 。

就労継続支援(A型・B型)

一般企業で働くことが困難な場合に、支援を受けながら働く機会を得られるサービスです 。

A型(雇用型)
事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給料が保証されます 。安定した収入を得ながら、支援のある環境で働きたい方に適しています 。

 

B型(非雇用型)
雇用契約を結ばず、体調に合わせて自分のペースで働けます 。生産活動への対価として「工賃」が支払われます 。まずは働くことに慣れたい、無理なく社会とのつながりを持ちたいという方に適しています 。

 

職場適応援助者(ジョブコーチ)

障害のある方が職場でスムーズに働き続けられるよう、職場に出向いて専門的な支援を行う専門家です 。本人への仕事の進め方のアドバイスだけでなく、事業主や同僚に対しても、障害特性の伝え方や関わり方について助言を行い、職場環境の調整をサポートします 。

自分のペースで仕事に取り組むなら就労継続支援B型事業所オリーブへ

ここまで、難病のある方の仕事探しにおける様々な選択肢をご紹介してきました。特に、「いきなり一般企業で働くのは不安」「まずは自分の体調に合わせて、無理のない範囲から始めたい」と感じている方にとって、就労継続支援B型は非常に有効な選択肢の一つです 。

就労継続支援B型事業所オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで複数の事業所を運営しています 。私たちは、利用者さん一人ひとりの「働きたい」という気持ちに寄り添い、それぞれのペースを何よりも大切にしています。

  • 週1日、1日1時間からの利用も可能
  • 簡単な作業から始められるので安心
  • 経験豊富なスタッフが丁寧にサポート
  • 同じような悩みを持つ仲間との出会い

「まずは話だけでも聞いてみたい」「どんな雰囲気の場所か見学してみたい」という方も大歓迎です 。これからの働き方について少しでも悩みや不安があれば、ぜひ一度、就労継続支援B型事業所オリーブにご相談ください。経験豊富な相談員が、あなたに合った働き方を一緒に考え、新たな一歩を全力でサポートします 。

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